紹介

 小杉放菴記念日光美術館は、主たるコレクションとして、明治・大正から昭和にかけて幅広い分野で活躍し、日本の近代美術史上に特異な存在感を示した日光出身の画家・小杉放菴の日本画、油彩画、水彩画、寫生画、書などの作品と、書簡や自筆の原稿、あるいは遺愛品などの関係資料を所蔵しています。
 コレクションの中核となる約1200点にもおよぶ寫生画は、1992(平成4)年に、放菴の長男で早稲田大学名誉教授であった故・小杉一雄氏より日光市へ寄贈されたものであり、四季折々の花や鳥、さまざまな人物、風景などが描かれています。その多くには、描いた場所や日付、細かな色の指定が記入されていて、画家の創造の秘密の一端をうかがい知ることのできる貴重な作品といえるでしょう。
 油彩画は、東京大学・安田講堂の舞台を飾る壁画制作の準備のために描かれ、現在、当館のシンボル的な存在である《泉》に代表される未醒時代の作品から晩年の日本画的な表現の作品まで。日本画では、いまだに洋画の影響を色濃くのこした大正時代の作品や、雅号を放庵(放菴)と改めてからの巧妙な筆致を生かした作品。もちろん、その中には、特別に漉かせた「放菴紙」と称される越前の麻紙に花鳥や道釈人物を描いた、寫生画とも密接な関係のある、放菴の典型的な作品もふくまれており、初期から晩年にいたる画風の変遷を辿ることもできます。
 さらに、水彩画として、明治30年代に日本を訪れた外国人旅行客向けの土産用に、《神橋》や《東照宮・陽明門》など、日光の社寺の代表的な光景を若い頃の小杉放菴が描いた作品。あるいは、良寛や道風の書風を慕うようになった晩年の短歌を記した書の小品が所蔵されている他、遺愛品には、横山大観と競って集め、実際の制作にも用いていたという澄泥硯や歙州硯、寶瓜硯、トウ河緑石硯、端渓紫石硯、乾隆御墨など、中国の古い硯や墨もあって、作品とともに貴重なコレクションを形成しています。
 小杉放菴記念日光美術館では、以上のような作品を順次、展覧会で御紹介しながら、多彩な才能をもった画人・小杉放菴の全体像に迫るために、これからも、質・量ともに充実したコレクションの形成に努めていきます。