小杉放菴と画材
一流の技術をもつ人は、
一流の道具にもこだわります。
小杉放菴も、絵を描くときに使う
画材にはこだわりつづけました。
水彩画には、本場イギリスの
ウィンザー&ニュートン社製の絵具。
日本画では、中国の古い硯(すずり)と墨。
友人の横山大観と競い合い、
古くから中国や日本で珍重されてきた
端渓(たんけい)や歙州(きゅうじゅう)といった
硯や、明や清の時代の優れた墨を集めています。
筆は、中国の曹素功(そうそこう)という
老舗(しにせ)のものを、
筆先が無くなってしまうまで
大切に使っていました。
これらの道具のいくつかは、
小杉放菴記念日光美術館で保存され、
ときどき展示されます。
日本画を描くときの紙には、
さらなるこだわりがありました。
放菴が使っていたのは、
越前和紙の産地・福井県の今立(いまだて)の
紙漉き名人として知られていた
初代の岩野平三郎さんに、自分の好みに合わせて
特別に漉いてもらった和紙で、
「放菴紙」と呼ばれています。
和紙の材料に、麻の繊維が漉き込まれた、
「麻紙(まし)」と呼ばれる、非常に薄い紙です。
晩年の日本画は、おもに、この「放菴紙」に
描かれています。
どんな紙なのかは、
ぜひ、美術館で確認してみてね。